Replica * Fantasy







No.40  【 君に殺されるならそれも良いかと、少しだけ本気で思った。 】




 キラは、もとを質せばただのクラスメイトだった。
軍人じゃない。
私は、その時から軍人だったけど。
何の因果か、キラはもうずっと敵軍だ。
彼と戦場で『仲間』になったことは一度もない。
 アスランとディアッカも、クラスメイトだった。
アカデミーの同期をクラスメイトと表現するのが適切かは分からないけど。
クラスメイトで『仲間』だったけど、今はもう敵らしい。
 気がついたら、アスランは戻ってきていて、そうかと思えば脱走したっていうし、MIAだったはずのディアッカは、生きててキラやアスランと一緒に居たって、イザークがキレてた。
もう大変。
 別に、アスランもディアッカを、それが彼らの意志で決めたなら何も言わない。
だって、状況がどうであれ、二人がプラントを攻撃するなんて、思えないもの。
ラクスも一緒なら、なお更。
けど、イザークの癇癪の始末まで私に押し付けるのはやめて欲しい。


!お前は何とも思わないのか?!」


 ついに、壁に八つ当たりをしているイザークの怒りの矛先が、こっちに回ってきた。
何とも思わないのかって?
何も思わないワケがない。
それでも、私とイザークの決定的な差は。


「私は、今までだってキラっていう友達と戦ってきたもの。それに、今更アスランが加わろうが、ディアッカが加わろうが、ラクスが加わろうが、何も変わらないわ。」


 そう。
別に、何も変わらない。
はず。
例えイザークが加わったって、私はザフトレッドだから。
そう思う。
だから私は、ラクスが宇宙へ上がるとき、残ると決めたんだ。


「――悪かった。」


 ちょっと惚けていたら、珍しくイザークが謝ってきた。
別に、謝ってもらうようなことは何とも無いと思うんだけどな…。


「謝らないで。イザークの怒りは正当だよ。だって私たち、ザフトのパイロットだもの。」


 ただ、守りたいだけなんだ。
キラとアスランとディアッカとラクス。
そして、イザークと私。
みんな、求めてるものは同じなのに、その方法が少しずつズレているから、道が別たれてしまった。


「お前は、どうしてそんな平静でいられる?」


 不意に、イザークがおかしなことを言うから、うっかり笑ってしまった。
別に平静ってワケじゃないのにな。
 ただ私は、誰かに殺されてしまうなら、私が殺したいと思っただけだし、誰かに殺されてしまうなら、彼らの手で殺して欲しいと思っただけ。


「ねぇ、イザ。私は全然平静なんかじゃないのよ。」
「そうかよ。」
「それも良いかと、少しだけ本気で思ったの。」
「はぁ?」


 主語のない言葉に、イザークは整った顔の眉間に皺を寄せる。
分かるように言えって、そう言われたけれど、とりあえず笑って誤魔化しておいた。
だって、全部言ったら、きっとイザークはまた癇癪を起こしちゃうから。






<<  Retune |  back |  Next >>


2009/09/30
へいせいなんじゃなくて、ただ、こわれちゃっただけなんです。
滾々No.50へ



(C) 2005-2009  Replica Fantasy 月城憂. Some Rights Reserved.
inserted by FC2 system