キラは、もとを質せばただのクラスメイトだった。 軍人じゃない。 私は、その時から軍人だったけど。 何の因果か、キラはもうずっと敵軍だ。 彼と戦場で『仲間』になったことは一度もない。 アスランとディアッカも、クラスメイトだった。 アカデミーの同期をクラスメイトと表現するのが適切かは分からないけど。 クラスメイトで『仲間』だったけど、今はもう敵らしい。 気がついたら、アスランは戻ってきていて、そうかと思えば脱走したっていうし、MIAだったはずのディアッカは、生きててキラやアスランと一緒に居たって、イザークがキレてた。 もう大変。 別に、アスランもディアッカを、それが彼らの意志で決めたなら何も言わない。 だって、状況がどうであれ、二人がプラントを攻撃するなんて、思えないもの。 ラクスも一緒なら、なお更。 けど、イザークの癇癪の始末まで私に押し付けるのはやめて欲しい。 「!お前は何とも思わないのか?!」 ついに、壁に八つ当たりをしているイザークの怒りの矛先が、こっちに回ってきた。 何とも思わないのかって? 何も思わないワケがない。 それでも、私とイザークの決定的な差は。 「私は、今までだってキラっていう友達と戦ってきたもの。それに、今更アスランが加わろうが、ディアッカが加わろうが、ラクスが加わろうが、何も変わらないわ。」 そう。 別に、何も変わらない。 はず。 例えイザークが加わったって、私はザフトレッドだから。 そう思う。 だから私は、ラクスが宇宙へ上がるとき、残ると決めたんだ。 「――悪かった。」 ちょっと惚けていたら、珍しくイザークが謝ってきた。 別に、謝ってもらうようなことは何とも無いと思うんだけどな…。 「謝らないで。イザークの怒りは正当だよ。だって私たち、ザフトのパイロットだもの。」 ただ、守りたいだけなんだ。 キラとアスランとディアッカとラクス。 そして、イザークと私。 みんな、求めてるものは同じなのに、その方法が少しずつズレているから、道が別たれてしまった。 「お前は、どうしてそんな平静でいられる?」 不意に、イザークがおかしなことを言うから、うっかり笑ってしまった。 別に平静ってワケじゃないのにな。 ただ私は、誰かに殺されてしまうなら、私が殺したいと思っただけだし、誰かに殺されてしまうなら、彼らの手で殺して欲しいと思っただけ。 「ねぇ、イザ。私は全然平静なんかじゃないのよ。」 「そうかよ。」 「それも良いかと、少しだけ本気で思ったの。」 「はぁ?」 主語のない言葉に、イザークは整った顔の眉間に皺を寄せる。 分かるように言えって、そう言われたけれど、とりあえず笑って誤魔化しておいた。 だって、全部言ったら、きっとイザークはまた癇癪を起こしちゃうから。 |
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