Replica * Fantasy







No.23  【 そこが最下層だと云うのならあとは這い上がるしか無い 】




 というわけで、来ちゃったヨ、流星街。
何が「というわけ」かって?
まぁ、つまり、勢いと成り行きで拉致られて来ちゃった☆みたいな?
だからね、まあ、もう諦めたというか、なんというか。


、一時間後には始めるから、今のうちにととと休んどくね。」
「うぇい?何を始めんの?」
「何って、修行だろ?」
「――ちょっとそこの眉無し、念のために聞くけど、なんの修行でつか?」
「あははー、ってば、喧嘩売ってるつもり?ボケてるつもり?それともシャレのつもり?念に決まってるでしょ。」
「帰るー!お家帰るー!!シャルのバカー!!!」
「失敬な。決めたのは俺じゃなくてクロロだよ。」
「帰るー!私お家帰るー!!クロロのバカー!!!」
「帰るな。」


 もうソッコー回れ右をしかけたら、回りきる前にクロロに首根っこ掴まれた。
だんちょー、それ、激しく首絞まるですが。超苦しいんですが。
 だいたい何なの?
頼んでもいないのに私をイタリアのボンゴレ屋敷から拉致ったのはそっちじゃん!
こっちの事情をどれだけ無視したら気が済むの?この人達!


「帰るー!私帰るもん!うわーん、ボスー!」
「わざわざ盗ったモノを、俺達がそんなに簡単に帰すと思うか?」


 しくしく、と。
クロロに首根っこ掴まれてぶら下げられながら叫ぶ。
だけど私を片手でぶら下げながらオールバックの頭をわしゃわしゃと崩して、童顔モードに変貌したクロロに微笑まれちゃ、怖くて逃げられやしねぇよ!


「ちなみに聞くけどさ、念ってどうやって起こすの?激無理矢理?超自然的に?」
「無理矢理に決まってるだろう?自然に起きるのを待ってたら、何年かかるか分かったもんじゃない。」
「帰るー!私お家帰るー!うわーん、ザン様ー!」


 まだ死にたくないし!と叫んだら、クロロに手ぇ離された。
つまり、ぼとって落とされた。
酷いよこのヒト(デナシ)。
幻影旅団のホームなんて、聞こえは良くても実際のところは瓦礫の城ってか、廃墟と楽園ってか、つまりは解体工事中に予算が行き詰まって放置された廃屋ビルのようなものだから、そこら中コンクリートのカケラばっかなんだもん。
刺さるよ。リアルに痛いよ。
 超恨みがましげにクロロを見上げたら、泣く子も黙る蜘蛛の団長さんは、スゲー呆れた眼で私を見ていた。


「何よ。勝てない喧嘩は売る気も買う気も無いわよ?!」
は、身の程を知ってるのか知らないのか良く分からないわね。」


 スゲー呆れた眼を向けてくるクロロに、気持ちだけファイティングポーズで構えたら、横からパク姐にちょっとだけ呆れた視線を向けられた。
褒められたのだろうか?


「え〜、身の程はちゃんと弁えてるだけだよ?だから勝てない喧嘩は(以下略)だし、念も(以下略)で十中八九死ぬから嫌なの。」
「(以下略)とか使てる時点でどうして喧嘩売てることに気付かないか。」
「そんなこと言っても、フェイタン。みんな同じこと何度も言われるのキライじゃん。」
「嫌いというか、ウザイだけね。」
「……つまり、抹殺対象になっちゃうんでしょー?」


 私はね、まだ死にたくないのよ。
と、続けようとしたところで。


「ま、毒を食らわば皿までと言うだろう?」


 どんっ、と。
不意打ち。 超不意打ち。
ちょっと視線を逸らしていた間に、クロロに精孔をこじ開けられました。
 ヲイコラマテっ!! イキナリ?!
何の覚悟も無くこじ開けられたの?!
それって、それって!!


「つーか、毒を食った覚えすらないのに皿まで食えとか拷問ですか?!」
「じゃあ、案ずるより産むが易し、だ。」
「余計わけわからないよぉぉぉっ!!」


 とりあえずパニクったので泣き叫んでみた。
いや、この期に及んで泣き叫んだ所で無意味なのも良く分かるんだが。
それでも泣き叫ばずにはいられんだろう?!
この状況は!!


「クロロの馬鹿ー!オールバックハゲ!若年寄り!鬼畜!外道!それから…それから…っ!」
「――、どうでもいいが、早く纏をしないと死ぬからな。」


 その勢いのまま、普段は絶対に言えないであろう団長への悪口を、皆を代弁して心の限り叫んでおきました。
これで死んでも本望じゃないけど、まあ、諸悪の根源に一度は吐いてみたい暴言を吐き散らしておいたので、一応良いとしとこう。
 若干クロロが返答するまでに間があったのと、声が低くなっていたのは気のせいということにしときたいと思います。
ええ。心から。
じゃないと、万が一死なずに済んでからの未来が無いので。
本当に。


「うわーん!私もう知らない!知らないんだからー!」


 ヤケになって泣くのはこの際不可抗力ですよね?
だって、『出来ない』を『出来ない』で終わらせとくのは簡単だけど、そしたら本当に私は終わっちゃうんだから。
 ということで、文字通り死ぬ気でリラックス体勢。
だって、確か漫画では自然体が一番とか言ってたし。
泣きながら自然体リラックスしましたとも。
こんなプチ錯乱状態で出来るかこんちくしょうとか思ったけども、こんな瀬戸際でも以外にうまく言って、ワオ、私実は器用?念の才能ある?とか思っていたら、自分を包む皮膜というか、纏的オーラはゆるゆると範囲が広がっていく。
上手くいってるのか? コレ。
それとも範囲が広がっていくってのは、オーラが垂れ流しになってるってこと?
もうワケ解んないし!!!
 つーか、リボーンちゃんの死ぬ気弾と併用すれば簡単だったんじゃ…。
死ぬ気で纏とか出来たんじゃ…。
いや、気付かなかった。
私は気付かなかった。
虚しくなるから気付かなかった事にしよう。


「私が死んだら除念師でもお手上げなくらい悪質な怨念になって取り付いてやる。」
「つってる割には、ちゃんと出来そうじゃねえの?」
って本当に良く分からない生物だよねー。」
「何であんなに生きが良いくせに面白いくらいにネガティブ発想なんだ?」
。失敗したときは骨くらい拾ってやるが、成功したら即修行に入るからな。そのつもりでやれよ。」
「いきなりモチベーション下がるようなこと言わないでよこのデコっぱち逆十字!!」


 とりあえず、いろいろと最下層まで落とされた私に残された選択肢は、這い上がるっての以外には無いらしい…。






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2010/01/11 
淡々No.11へ続く。



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