「髪を押さえててくれるかい?」 「分かった。」 そういって、やっぱりは無造作に髪を掻き揚げる。 それは、既に結ばれたそれを持ち上げるという、ただそれだけの動作だったけれど、普段は銀色の髪に隠れたうなじがむき出しにされたさまを見るのは、少し動揺した。 「――……」 「どうしたの?」 後ろを向いて、キルヒアイスの要求どおりに髪を上げたのに、中々それを結んでくれない彼に、は不思議そうに振り返る。 「何でもないよ」と答えて、キルヒアイスは細くて白い首に、紅いリボンと手を這わせる。 少しだけ、が反応した姿を、まるで楽しむように微笑みながら。 「僕は、ちょうちょ結びしか出来ないからね。」 「充分よ。私だって、それ以外には出来ないもの。」 キルヒアイスが誤魔化すように軽口を叩き、もそれにふわふわと乗っかってくる。 きゅっと、紅いリボンが結ばれる音と共に、の首に細い圧迫感が少しだけ。 はそれで終わりだと振り返ろうとしたが、キルヒアイスはその細い首から手を離そうとはしなかった。 「ジーク、どうしたの?」 「なんでもないよ、。ただ…」 肩越しに振り返れば、キルヒアイスはにっこりと微笑んで答える。 「簡単に折れてしまいそうで、怖くなっただけだ。」 そう続けて、すうっと、キルヒアイスはの首元をなぞる、ぞくりとする感覚に肩を少しだけすくめると、はまた肩越しに幼馴染の方に振り返り、そして、その楽しそうな表情に返す言葉に詰まってしまった。 |
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