中学生の頃からそうだったけど、うちのファミリーは此処の仕事をするのに俺のところに集まる傾向がある。 もちろん、雲雀さんや骸さんは例外だけど、獄寺君とか山本とかね。 最近では、がそこに加わるのも、ごく自然なことかも知れないけど、は俺の部屋に来ても何をするわけでもなくて、本と読んだり寝たりしてるのが殆どで。 今日はずっとソファを占領して体育座りをして考え込んでいるけど。 ちなみに、獄寺君は火薬の調合しているし、山本は刀の手入れをしている。 でも俺は、連日デスクに向かって腱鞘炎になりそうなくらいに膨大な量の書類にサインをしている。 あれ?何だかんだいってファミリーの仕事してんのって、俺だけ? ちょっと貧乏クジに涙がちょちょ切れそうになっていたら、不意にが声をかけてきた。 「ねぇ、ボスー?」 「何?、どうかしたの?」 「どうもしないけど、ちょっと思うところあってー。私ボスに引き取られて良かったー!」 ソファの背凭れに腕をかけて、が身を乗り出してくる。 その向こうで、作業中だった獄寺君と山本も顔を上げた。 俺はといえば、脈絡もなくそう言われて、年甲斐もなく少し照れくさくなる。 の思考回路が前後の文脈を完全に無視して言葉を発するのは珍しいことでもないけど、今日は少し真面目モードというか、素直モード? いつもは何だかよく分からないけど。 「うん?それは嬉しいけど、何でまた急に?」 「だって、思ったんだけどさ、もし引き取られた先がトマゾ・ファミリーだったりしたら、私ロンシャン君を暗殺してファミリーを乗っ取るか、もしくはそのまま壊滅か瓦解させる自信があったもん。」 「――………。」 「あのノリは、殺意を抱くには十分だよねー?」 何と言うか、うん、そうだネ。 思わず語尾がカタカナになっちゃうくらいには納得したヨ。 何か、さっきの感動が微妙に薄れたけど。 「でもねぇ、。そんな物騒なこと、サラっと言うモンじゃないよ。分からなくもないけど。」 「いやいや、5分間よく考えた結果だよ。つーか、分かってくれるんだ?さすがパパ。」 「5分間って短くない?それに俺、パパじゃないから。のパパは9代目でしょ?」 「5分も考えれば充分だっての。それに、いくら書類上の父親でも、年齢的には9代目はおじいちゃんだよ。実際9代目の私の扱いは初孫を喜ぶおじいちゃんそのものだし。」 例え私がザン様の隠し子だったとしても誰も驚かないヨ、と。 は少しだけふてくされたように言う。 まあ、確かに年齢的にもザンザスの隠し子でもおかしくないよな。 清廉潔白って言葉とまったく持って無縁な生活送ってるし。 ありとあらゆるイミで。 「だから、年齢的にはザン様がパパでボスはお兄ちゃんってトコかなー?」 「分かった分かった。なら、ザンザスをパパって呼んでみれば?あの人のこと、予想以上に気に入ってるから、喜ぶかもよ?」 何かもう、会話の内容のくだらなさというか、不毛さというか、とにかくよからぬことを察してしまいそうな方向に流れていきそうな会話を、何処で切ろうかと考えながらテキトーに言えば、はバカバカしいくらい大袈裟に反応してくる。 若いなぁ。 「ボスは私に死ねと言うの?!ザン様をパパなんて言ったら、一晩中いじめ倒されるよ!朝には掻っ消されてるし!だからそこだけチェンジなんだよ?!ボスがパパでザン様がお兄ちゃんなの。」 意味が分からないし。 まぁ、いいけどね。 仁王立ちで力説するを、どうにか宥めてソファに座らせる。 ちょっと、獄寺君と山本も、笑ってないでの暴走を止めてよ。 なんだか、パパとしてはあんまり聞きたくない言葉を聴いたような気分。 でも、は珍しく真面目だし。 何か今日はちょっと素直モードだし。 多分、本当に殺ると言ったら殺るだろうな。 そして、きっと出来ちゃうんだろうな、と、思う。 あぁ、なんか、こんな時ばっかり超直感冴えまくりです。 ちょっと切なくなったけど、は何かご機嫌なままで続ける。 「ボスがパパで良かった。私、幸せだよ?」 「――娘が犯罪者にならずにすんでよかったよ。」 何てあからさまなテレ隠し。 ちょっと視線をさ迷わせてからもう一度を見れば、何と言うか、やっぱり冗談とかそんな雰囲気ではないので。 まったく、この子は。 時々大真面目に可愛いこと言ってくれるんだよな。 「しょうがないなぁ、じゃあパパはのために頑張って働くよ。」 「わー!さすがパパ!」 腱鞘炎の手に鞭打ってサイン書きを再開させた。 最後だけちょっと棒読みな気がしたのは、気のせいってことにしとこう。 |
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