黙々とデスクについて仕事をしているラインハルトを、はソファに膝を抱えて見ていた。 そんな縮こまらなくても、普通に座ればいいだろうに、とは、今ではもう誰も言わない。 それがのお気に入りの体勢であることは、今ではラインハルトの幕僚なら誰でも知っている。 特にすることもなく、ただラインハルトが仕事を終えるのを待っていたは、何枚猫を被っているのか問い質したい程に大人しくしていたが、流石に一時間も二時間もそのままだと状況に飽き飽きしていた。 「ねぇ、ラインハルト。」 「なんだ?」 声をかければ即座に帰って来るものの、ラインハルトはデスクに落ちた視線を上げようとも、しなやかな手に握るペンを止めようともする気配が無い。 反射的に返事をしているのだろうなと当たりを付けたは、面白くなさそうに、むーっと唇を尖らせる。 軍のトップに立つのだから、忙しいのは分かるけれど、それならどうして自分を呼ぶのか、には理解できなかった。 一方的に呼び出し、何をするでもなくラインハルト自身は黙々と仕事を片付けていく。 が退屈しないようにと、ラインハルトも本やら何やらと色々用意してはいるものの、何日も同じような状況が続けはが飽きるのも早い。 もっと言ってしまえば、自身、こうなることが分かっているのに、どうして自分は呼ばれると素直に此処にきてしまうのか、それも不思議だ。 は声をかけたきり、やはり黙り込んで、膝を抱えたその隙間から暫く無言でペンを走らせる幼馴染を見つめていた。 その視線にも気付いているのかいないのか、ラインハルトは少しの動揺も見せずに仕事を続ける。 窓から差し込む光が、ラインハルトの髪に反射して、きらきらしていた。 ぼんやりとそれを見つめていたが、何かに気付いたように顔を上げる。 「ああ、分かった。」 「どうした?」 むくれたと思ったらまた黙り込んで、何かを考えていたと思ったら一人で納得したかの様に呟いたに、ラインハルトは変わらず執務をこなしながら問いかけた。 「わたし、きっとラインハルトが好きなんだと思うの。」 裏も表も無い、自分のその瞬間を言語化したの言葉に、ラインハルトはようやく手を止めて顔を上げる。 未だ子供の領域から脱しない少女の大らかな告白に、ラインハルトは形のいい口元を緩めると、一つ、に微笑んだ。 |
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