膝を抱えたは、キルヒアイスの部屋のソファを占領して小さく丸まっていた。 最近、彼の元へ訪れることの多いこの少女は、今日もどこかぼんやりとまどろんでいるかと思えば、不意に突拍子も無いことを言い出す。 「ジーク。」 「何だい?」 それに慣れているキルヒアイスも、デスクに並んだ仕事の書類に視線を落としたまま答える。 「ジークはお兄ちゃんだけど、血は繋がってないのよね?」 呟いたは、まだどこか漂っているような雰囲気のままだ。 どこか突き放されるような印象を受けるその言葉に、キルヒアイスは即答しかねて無言で顔を上げる。 どういう意味なのかと、問いかける視線を向けたが、全く明後日の方向に視線を漂わせているは、もちろん気付くはずもない。 もともと、答えなども求めていないのかもしれない。 「――どういう、意味かな?」 やや口調が固くなったキルヒアイスに、はようやくそちらに顔を向ける。 そしてやはり膝を抱えたまま、少し笑って。 「まだ、言ったことが無い言葉があるなって思って。言っても良いのかな、って。」 「言ったことが無い言葉?」 反復して聞き返せば、はまだ丸く小さくなって、微笑んだままで。 はにかんだような微笑が、強張ったキルヒアイスに向けられた。 「あいしてるわ。」 「――なんだって?」 思わず目を見開いて、手に持っていたペンを落としたのにも気付かず、問い返してしまった。 だけどは、やはり笑ったまま、だけどほんのりと頬を紅く染めて一言。 「一度しか言わないもん。」 |
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