Replica * Fantasy







No.19  【 微睡に溶ける子守唄 】




 空耳かと思った高い旋律がそうではないことに気付いて、振り返れば、はウォークマンで耳を塞いでソファで膝を抱えて窓の外を見ていた。
 俺が、パソコンにばっか向かっていての相手をしていないから、拗ねてんじゃないかと思うのは、多分俺の願望であって、は別に俺が忙しかろうがヒマだろうが気にしていない。
俺が忙しければ自分の暇潰しを真剣に考えるが、俺がヒマなら俺に合わせようとする。
別には自分が無いわけではないが、もう少し我が儘くらい言わねぇと張り合いが無い。
 流石にパソコンの液晶のせいで眼が痛くなったので、一度電源を落としてそこから離れた。
時々漏れる細くて高いの声が、疲れた脳内に心地良い。
そんな変な体勢で、しかも俺に気を使ってか声量を大分落とした状態で、その細い体のどこからそんな声が出るんだか。
 特に足音を殺して近付いたわけではなかったが、イヤフォンをして音楽を聞いていたは、俺が側に来てやったのに気付きもしない。
ためしに「」と呼んでみるが、無反応。
あ〜ん?いい度胸してんじゃねえか。
今ここで答えねぇなら、俺の好きにして良いってことだな?
 すぽっと、流石にイヤフォンを抜かれればも俺に気付くというもので。
いつまでたっても名前で呼ばないが、やはり今回も「先輩?」と漏らすのを無視して、俺は三人掛けのソファに寝そべる。
むろん、頭はの膝の上。
見上げればは、状況が飲み込めていない様子で俺を見下ろしていたから、小さく溜息をついてから答えてやった。


「おい、。」
「あ、先輩。どうしたんですか?」
「疲れた。寝る。」
「寝るなら、ベッドの方が寝やすくないですか?」
「あ〜ん?お前は彼氏にひざ枕するのが嫌なのか?」
「よだれ垂らさないで、私の足が痺れたらすぐどいてくれるなら、いいですけど。」
「俺がいつよだれ垂らして寝てたんだよ。痺れたら、責任取って運んでやるよ。」
「家まで?」
「ベッドまで。」
「私、今日は泊まらないもん。」
「――俺も、止めらんねぇ。」
「心配しなくても、ちゃんと帰るって言ってるじゃないですか。」
「だから、そうじゃねぇよ。」


 ちょっと、傷ついたカオしたくせに。
の膝に頭を置いたまま、手を伸ばす。
小さい体だから、俺の腕はすぐの顔に届く。
そのまま顔を引き寄せた。
嫌なら、振り払える速度で。
 まるで鈍いも、流石に半分ほども距離を縮めれば俺の意図も読めるというもので。
ゆっくり近付くにつれて、思わず笑いそうになるほど真っ赤になるくせに、それでも拒まないから、俺はそのままの唇に噛み付くようなキス。
 にとっては体を屈める少し辛い体勢だったかもしれないけど、構わずにその感触と、の呼吸を存分に味わう。
ぱらぱらと零れてくるの前髪が擽ったい。
角度を変えるたびに漏れる、溜息のようなの声を飲み込んで、ようやく解放した。
 真っ赤になって俺を睨みつけてくるに一つ、にやりと笑ってから、俺はその口が苦情を申し立てる前にもう一度、今度は触れるだけのキスをして、先制しておく。


「だから、『止められねぇ』って、言っただろ?」






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2010/03/22 
子守唄は何処かへ行ってしまいました…OTZ



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