「隼人さん、私は不満があるんです。」 むっつりと、パジャマ姿で部屋を訪れたは、枕を抱えてあたかも最終決戦にでも臨むくらいの勢いで俺に言い放った。 何か眉間に皺が寄りまくりで俺を睨んでいるが、ぶっちゃけ怖くもなんとも無いから反応に困る。 「あー、で。何が不満なんだ?」 「みんな私を甘やかしすぎ。」 ごく端的に答えて、はそのまま問答無用で部屋へ押し入ってくる。 しかも、真っ先に向かったのは俺のベッド。 おい、言ってることとやってることがめちゃくちゃじゃね? とりあえず銜えていた煙草を消し、我が物顔で俺のベッドを占領したを観察していると、どうやらはこのまま此処で眠るつもりらしい。 持ってきた枕を置くと、ぼふぼふと形を整えて毛布の中にもぐりこむ。 「あー、何だ?不満があるから嫌がらせといわんばかりに俺のベッドで眠るわけか?」 「んー、そういうわけじゃないけど、そんなトコかな?はい、隼人さんこっちね。」 こっちねって、お前な。 は何でも無い顔をして、自分の隣をばふばふ叩く。 行動や言動が意味不明なのは今に始まったことではないが、今回のはそれも局地って感じだ。 っつーか、危機感感じろよ。 お前、此処は男の部屋だっつーの。 ガシガシと頭をかいて、仕方がないから今日の寝床をソファに定める。 別に、選ばなければ、この屋敷で寝床に困ることはまず無い。 だが、は先手を打ってきた。 「ちなみに隼人さん、此処で寝なかったら負け犬ね。」 「――良い度胸してんじぇねぇかよ。」 何だ負け犬って。 そんなに襲われたいか、このガキ。 別にわざわざ吹っかけられた喧嘩を買う必要はなかったが、俺はあえての安っぽい喧嘩を買ってやることにした。 まだ寝るつもりは無かったけど、部屋の明かりを落としての横にもぐりこむ。 と、はべったりと俺の側面に張り付いてきた。 「あったかーい…」 「俺は湯たんぽじゃねぇよ。」 「でも煙草くさーい…」 「うるせぇよ。」 疲れたように言い返したが、寄り添った体温が心地良いことは、仕方ねぇから認めてやる。 「で、どうしたんだ?今日は。」 「別に。みんなが私を甘やかすのが不満だったの。」 何気なく問い詰めれば、はむっつりと答える。 意味が分からなくて、顔を覗き込もうとしたが、暗くてもうの表情は分からなかった。 「みんな甘やかしてくれるのに、『もっと私を甘やかせばいいよ』とか思ったのが、悔しかっただけよ。」 「意味分かんねぇし。」 心底悔しそうにいが補足して。 思わず俺が噴出せば、は思いっきりしがみ付いてきた腕をつねってきた。 |
(C) 2005-2009 Replica Fantasy 月城憂. Some Rights Reserved.