Replica * Fantasy







No.35  【 君がいた証なんていらないから、君自身が此処にいて 】




 と。 言われてしまった。
14歳の女の子に、19歳の男の人が言うには、ちょっと笑えない言葉。
私が言うのもなんだけど、からかってるならやめて欲しいし、本気だとしたら、その真意が何処にあるのか少し気になるところで。
 暫くアレルヤの、片方だけ私に見える眼を見上げてみたけど、あまりよく分からなかった。
一つ、分かったのは、冗談ではないってこと。
一つ、確信したのは、今の言葉には、いわゆる恋愛感情と言われるものは微塵も含まれて無いってこと。


「どうして?」


 それでも、分からないことだらけだったから、とりあえず聞いてみた。
だって、何かうやむやにしてはいけないような気がしたから。


「さぁ、どうしてだろうね。」
「私がコーディネーターで、アレルヤがデザインベビーだから?」
「さぁ、どうだろう。」


 でも、私が問いかけても、アレルヤは困ったように笑うだけだ。
本当に、自分でもよく分かってないのかもしれない。


「還り方が分かるまでは、私は此処に居るよ?」


 此処しか、受け入れてくれるところなんて無いだろうし。
私もアレルヤやロックオンたちが好きだから。
一緒に戦うし、笑うし、泣くし。


「その後は?」
「還るに決まってるじゃない。」


 だって、此処は、私の世界じゃない。
私を受け入れてくれる人たちがいても、私が生まれた世界じゃない。
私が戦ってきた世界じゃない。
私が守りたかった人は、此処には居ないから。


、還らないで。」


 それでもアレルヤは、泣きそうな声で言う。
どうして私に執着するのか、それが全く分からなかった。


「アレルヤが、私と一緒に居たいって言ってくれるなら、アレルヤが「こっち」に来て。それが出来ないなら、私が「還る」って言い張る理由も分かるでしょう?」
「――そうだね。僕は、わがままを言っているんだ。に無理難題を押し付けているのだろうね。だけど。」


 少し言葉を切ったアレルヤの手が、伸ばされてくる。
私の顔を触れるか触れないかの距離ですり抜けたその手は、髪の毛に絡んでから、そのまま後頭部を掴んだ。
私は、無重力空間の中を、変な体勢でアレルヤの方へ引き寄せられる。
 あ。 顔、近い。 眼の色、が。


「悪りぃが、アレルヤだけじゃねぇんだ。俺は、俺の好きなようにする。」


 まるで噛み付くような、獰猛な囁きと共に。
ごく至近距離に現れた彼は、もう「アレルヤ」ではなくて。


「ハレルヤ?」


 どうやらもう一人の方のスイッチを入れてしまったらしい。






<<  Retune |  back |  Next >>


2008/11/28
恋愛じゃなくて、同族嫌悪に近い感情から離れられないとかだといい。



(C) 2005-2009  Replica Fantasy 月城憂. Some Rights Reserved.
inserted by FC2 system