Replica * Fantasy







No.31  【 空は高くて明るくてきれいだけど、あの瞳を思わせるその色は少しだけ、 】




「今日はよく晴れていますね。」


ヒルダは空を見上げて静かに呟く。
だけどは、一度は空を見上げたものの、曖昧に笑ってすぐに視線を地面に戻してしまった。


「空を眺めるのは、嫌い?」
「そういうわけでは無いんです。」


 ヒルダは少し屈んで、俯いたの顔を覗き込む。
と、はまた少し微笑んで答えた。


「空は好きです。雲が流れる様とか、朝焼けや夕焼けの、色が変わる瞬間とか。ただ…」
「ただ?」
「真昼の空は、余り好きじゃなくて。」


 曖昧に言葉を濁して、そしては困ったように少しだけ微笑む。
本当にそれは、困惑したような戸惑いに満ちていて。
ただの空が、何故それ程までに困惑するのかとヒルダが首を傾げれば、はその視線だけの問いにも同じように笑って答えた。


「あの眼の色を思い出すので…」


 それは、苦笑のような、そうでないような。
 ヒルダはの言葉に、蒼氷色の眼を思い出したが、彼女が思っているよりも、はもう少し意味が広いようだった。


「空の色って、その時々で色が変わりますから。」


 ラインハルトと、キルヒアイスと、ロイエンタールと。
 順にその空と同じ色の眼を持つものの名前を上げてから、まるで大変な浮気ものになった気分です、と。
は寂しげに微笑む。
 いつまでたっても、忘れさせてくれないその(あお)が、いつまでたっても癒えない傷に滲みた。
 彼らはもうこの世の何処にもいないのに、それを思い出させる色がこんなに近くにあることが、酷く愛しくて哀しかった。






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2008/06/27
もし、原作通りに登場人物が死んで逝くお話だったら。
は寂しく微笑むことはあっても、決して泣かなかったでしょう。



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