「今日はよく晴れていますね。」 ヒルダは空を見上げて静かに呟く。 だけどは、一度は空を見上げたものの、曖昧に笑ってすぐに視線を地面に戻してしまった。 「空を眺めるのは、嫌い?」 「そういうわけでは無いんです。」 ヒルダは少し屈んで、俯いたの顔を覗き込む。 と、はまた少し微笑んで答えた。 「空は好きです。雲が流れる様とか、朝焼けや夕焼けの、色が変わる瞬間とか。ただ…」 「ただ?」 「真昼の空は、余り好きじゃなくて。」 曖昧に言葉を濁して、そしては困ったように少しだけ微笑む。 本当にそれは、困惑したような戸惑いに満ちていて。 ただの空が、何故それ程までに困惑するのかとヒルダが首を傾げれば、はその視線だけの問いにも同じように笑って答えた。 「あの眼の色を思い出すので…」 それは、苦笑のような、そうでないような。 ヒルダはの言葉に、蒼氷色の眼を思い出したが、彼女が思っているよりも、はもう少し意味が広いようだった。 「空の色って、その時々で色が変わりますから。」 ラインハルトと、キルヒアイスと、ロイエンタールと。 順にその空と同じ色の眼を持つものの名前を上げてから、まるで大変な浮気ものになった気分です、と。 は寂しげに微笑む。 いつまでたっても、忘れさせてくれないその空が、いつまでたっても癒えない傷に滲みた。 彼らはもうこの世の何処にもいないのに、それを思い出させる色がこんなに近くにあることが、酷く愛しくて哀しかった。 |
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