私設武装組織「ソレスタル・ビーイング」は、孤立無援の戦闘集団だ。 その武装はユニオンにもAEUにも人革にも、勝るとも劣らないが、規模はまるで違う。 その支援をするシークレット・エージェントは多くいても、最前線に立つ人員は、たったの四人しか居ない。 孤独な戦いは、最初から想定内だったが、想定外だったのは、彼らのガンダムに張り合える性能を持ったMSと、それを自在に乗りこなすことが出来るパイロットが、現れたことである。 見慣れないMSに乗ったまま気を失って漂流していたところを、幸か不幸かソレスタル・ビーイングに保護された拾われた少女は、膝を抱えてこれからミッションに向かうガンダム・マイスターたちを睨んでいた。 「いいから大人しく待ってろ。俺たちはこれから地球に降下するんだ、慣れない奴には無理だろう。」 「地球降下作戦なんて、とっくに体験済みよ。GN粒子がどんなものか知らないけど、耐熱構造ならPS装甲でも充分だわ。私の機体だって、単独で大気圏突入出来るわよ。」 「でも、君はガンダム・マイスターじゃない。」 「ええそうね。そして貴方達はザフトレッドじゃない。何が違うというの?」 自分もミッションに連れて行けと言うに、ロックオンとアレルヤが二人がかりで宥めようとしていた。 刹那とティエリアは、そもそも関わる気が無いらしい。 それでも彼らが口を挟まないのは、ヴェーダの戦術予報に、彼女の必要性が酷く曖昧に告げられていたからだ。 今度のミッションは、手があればあるだけ有効になる。 だが、と彼女のMSについて、不確定要素が多すぎるのだ。 客観的に彼女のMS、『』の装備だけを見るのであれば、ヴェーダは彼女を参加させるべきだと告げている。 だけど、彼女がそれを使いこなせるのか、ガンダム・マイスターたちに遅れを取らずに連携が出来るか、それが未知数なのだ。 スメラギは、どうするかの決断をガンダム・マイスターに委ねた。 彼女は、出来ればに戦力になってもらいたいと思っている。 それは、今回に限らずこの先を見通してのことでもあった。 だが、を拾った張本人であるロックオンと、ある意味ではと同じく戦闘のために遺伝子を組みかえられて生まれてきたデザインベビーであるアレルヤは、あまりいい表情をしない。 何より、彼女はまだ14歳で、幼すぎる。 だが、は彼らがその話をするより早く、自らミッションに参加することを望んだのだ。 「戦争も戦場もテロも虐殺もとっくに経験済みだわ。あと知らないのは、捕虜の拷問の仕方くらいよ。ねぇ、お願い。私も一緒に連れてって。一人にしないで。」 既に紅いパイロットスーツに着替えていたは、酷く不安そうな表情でそう繰り返す。 精神的に不安定になっているに、ロックオンは宥めるようにその頭に触れれば、『セクハラハンターイ!』と、のハロが声を上げる。 「一人にったって、此処にはスメラギさんやフェルトたちが居るだろうが。」 「そうよ、組織には属していても、最前線には出たことが無い綺麗な人達ばかりよ。」 そんなところに一人にされたら、私、自分との違いばかりが目に付いて、苦しくて死んでしまうわ、と。 は視線だけで訴えかけてくる。 暫くにらみ合って、そして、は糸が切れそうなくらいにか細い声を押し出した。 「ねぇお願い。一緒に連れてって。じゃなければを自爆させてこの旗艦ごと核爆発で跡形も無く消え去ってやるんだから。」 別の世界から飛ばされてきたらしい、の痛みを、二人は少しだけ理解した。 今、と『同じ存在』は、ガンダム・マイスターたちしか居ないのだ。 だから、離れたくない。 もう一人になりたくない。 ロックオンとアレルヤは僅かに顔を見合わせて、そして小さく溜息をついてから、無言でそれの言い分を認めてやった。 「僕らは、慰めることすら出来ないんですね。」 「なら、せめて傍に居てやるべきか…。」 それでまた、が戦火に身を投じても、彼女がそれを望むのだから仕方がない。 |
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