地球の重力に捕まり、ジブラルタルへと身を寄せたイザークとディアッカは、酷く不機嫌だった。 今後の指示を受けるためにクルーゼに通信をしてみれば、彼は暫く地上で足つきとストライクを追えというのである。 だからそれに従うべく、現在足つきと交戦中のバルトフェルト隊に合流したのだが、それでも気晴らしにはならなかった。 イザークとディアッカの機嫌は、その砂漠の過ごしにくさに更に急降下していったのである。 着陸の風圧と共に巻き上げられた砂に、ディアッカは片手を挙げてそれを遮りながらぼやき、イザークも顔をしかめる。 そんな二人に対して、同じく地球の重力に捕まってMSごと落下してきたは、全く逆の反応を示していた。 「凄い!私、砂漠なんて始めて!」 そういって、輸送機から降りるなり早々に砂の上を走り出したに、イザークとディアッカは頭を抱えたくなる。 この少女は、一体此処に何をしに来たと思っているだろうか。 地中海に着床したときも、ジブラルタル基地に着いたときも、はやれ本物の海だ、やれ山が見えるなど、いちいち大げさにはしゃぐ。 確かにプラントでは景色から天候から総てが管理された人工物であるし、自分達は第二世代であるから生まれも育ちも宇宙であって、地球のそれはもちろん初めて目にするものばかりだ。 だが、だからといって本物にそこまで感激する精神構造が、イザークとディアッカには良く理解できない。 「熱ーい!ざくざくしてる!」 二人から向けられる白々しい視線など全く持って気付いた様子も無く、はべったりと地面に触れたり、砂を蹴飛ばしたりして歓声を上げる。 そして、吹き上がった風に巻き上げられた砂を追うように視線を空に上げて、その空に浮かぶ雲が、物凄い速さで移動していくさまを見て、まるで首の据わっていない乳児さながらに頭を仰け反らせて叫んだ。 「イザ!ディー!!雲が凄く早い!!」 そのまま空を見上げたまま、今度はこちらに走って戻ってくる。 ただでさえ短いスカートが、ひらひらと揺れて際どくなっていることにも、は気付いていないだろう。 「おい、!前向かないと転ぶって!!」 呆れた様子を全く隠そうともせずディアッカが叫べば、案の定、はそれに答えるよりも早く、砂に足を取られて盛大に転げた。 ついでに盛大に見えるはずだった下着の変わりに、インナーが視界に入り、ディアッカはあてが外れたように肩をすくめる。 何だつまらん。 それでもけらけらと笑っているに、宇宙からの到来者を迎えに来たバルトフェルトが手を差し出す。 「お嬢ちゃんは、あっちの二人に比べて適応力がありそうだな。」 人を食ったような笑みで差し出された手を、は首を傾げながらも素直に握る。 一息に起こされて、その手がそのまま握手の状態になると、バルトフェルドはにやりと笑っていった。 「ようこそ、"レセップス"へ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルトだ。」 初体験の地球に、テンションが最高潮に上がっていたも、流石に大慌てで背筋を伸ばして敬礼を返した。 砂塗れのままで。 「クルーゼ隊、・です!」 |
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