「ねぇ、武さん。私、お仕事手伝わなくて良いのかな?」 「ん?なんだ、急に。」 ぱふぱふと、何か耳かきみたいな道具で刀の手入れをしていた武さんに話しかけてみる。 普段は竹刀の形状をしているその刀も、どうやら手入れをするときにはちゃんと刀に戻ってるらしい。 すげーなー。 便利だなー。 なんて、とてもどうでも言いことに感激しながら武さんの顔を見れば、何か想像以上に接近戦。 「…武さん、何か、顔近くないですか?」 「そうか?が寄ってきたんだろ?」 「そりゃそうですが。」 ちなみに、武さんはソファの上で胡坐をかきながら刀のお手入れをしています。 私はその背後から忍び寄って―実はガッツリばれてそう―、その背凭れから声をかけてみました。 結果! 振り向いた武さんの顔が以上に近いという、超誤算。 「でも、刀持ってるときは危ないから、おふざけしないよね?」 「んー、そうだな。暴発防止のために、一回竹刀に戻すかー?」 「そんなに私が好きかちくしょう。別に構ってくれなくても良いからお手入れ続けて下さい。」 にこやかに返してくる武さんに、更ににこやかに返してみる。 うふふふふ、分かってるさ、こめかみに青筋が浮いてる時点で、私の負けだろ。 くそぅ…。 でも武さんは、やっぱり刃物を扱ってるからか、それ以上私に構うことなく、作業を続けてるわけでして。 することも無い私は、馬鹿みたいにぼーっとその作業を眺めていた。ら。 「ー。」 「何ー?」 手元から視線を離さないまま、武さんが私の名前を呼んだ。 それで、続けて。 「無理に同じ世界に馴染もうとしなくて、いいんだぜ?」 「――そんなにわたしがだいじですか、ちくしょー…」 何か悔しくて、ソファの背凭れに顔を伏せて言い返したら、武さんはやっぱり作業を止めることなく笑った。 |
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