朝からいつもと様子が違うことには、気付いていた。 あえてこちらから言い出さなかったのは、それでは意味がないと思ったから。 は、休み方を知らない。 だけど、いつまで経ってもそれを言い出さないから、そろそろ見かねたラインハルトは、溜息と共に一つ、の腕を掴んで自分のほうを向かせた。 「――どうしたの?」 何処か鈍い反応。やはり、間違っていないらしい。 「、苦しいときは笑わなくても良いんだ。」 「ラインハルト……」 何を言っているのか、どうしてそんなことを言うのか、まるで理解していないような、困惑した表情で、はラインハルトの、少し眉間に皺の寄った顔を見上げる。 「無理をする必要がどこにある?体調が悪いなら、なお更だ。」 「でも…」 図星を言い当てられたことが気まずいのか、それともまだ、自覚が足りていないのか、は言いよどんで視線を彷徨わせる。 ラインハルトは掴んでいた腕を離して、そしてをソファに座らせた。 「一人では寂しいか?それなら連絡をくれれば、俺かキルヒアイスのどちらかが行ったさ。」 「二人とも、忙しいんだもん。」 むくれたように言い返して、そして小さく俯いたに、ラインハルトは小さく溜息を漏らす。 体調不良で感情の振れ幅が大きくなっているのか、目元が少し潤んできたの顔をわざわざ眺めてやるかのように、彼は屈んで視線の位置を合わせると、の細いおとがいに触れて、少しだけ顔を上げさせた。 「これでも、最優先事項が何かくらいは、分かっているつもりだったんだが。」 その言葉に、訳も無く頬が赤くなるのを自覚したは、その手を振り払うようにまた俯いて。 ラインハルトは少しだけ笑って立ち上がると、誰に連絡を入れようとしているのか、ヴィジホンの番号を押し始める。 恨めしげにその姿を見上げていたは、かすれるような声で問いかけた。 「ねぇ、ラインハルト。」 「何だ?」 応える声は、こちらに振り返らなかったのだけど。 「どうして、わかったの?」 「どうして、わからないと思ったんだ?」 不思議そうに首を傾げて見上げれば、少し涙せ歪んだ視界の向こうでは、美貌の幼馴染は首だけこちらに向けて、にやりと笑って更に問い返してきた。 |
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