Replica * Fantasy







No.11  【 上手な笑い方は心得ているはずだったのに、どうして見破られた? 】




 朝からいつもと様子が違うことには、気付いていた。
あえてこちらから言い出さなかったのは、それでは意味がないと思ったから。
は、休み方を知らない。
 だけど、いつまで経ってもそれを言い出さないから、そろそろ見かねたラインハルトは、溜息と共に一つ、の腕を掴んで自分のほうを向かせた。


「――どうしたの?」


 何処か鈍い反応。やはり、間違っていないらしい。


、苦しいときは笑わなくても良いんだ。」
「ラインハルト……」


 何を言っているのか、どうしてそんなことを言うのか、まるで理解していないような、困惑した表情で、はラインハルトの、少し眉間に皺の寄った顔を見上げる。


「無理をする必要がどこにある?体調が悪いなら、なお更だ。」
「でも…」


 図星を言い当てられたことが気まずいのか、それともまだ、自覚が足りていないのか、は言いよどんで視線を彷徨わせる。
ラインハルトは掴んでいた腕を離して、そしてをソファに座らせた。


「一人では寂しいか?それなら連絡をくれれば、俺かキルヒアイスのどちらかが行ったさ。」
「二人とも、忙しいんだもん。」


 むくれたように言い返して、そして小さく俯いたに、ラインハルトは小さく溜息を漏らす。
体調不良で感情の振れ幅が大きくなっているのか、目元が少し潤んできたの顔をわざわざ眺めてやるかのように、彼は屈んで視線の位置を合わせると、の細いおとがいに触れて、少しだけ顔を上げさせた。


「これでも、最優先事項が何かくらいは、分かっているつもりだったんだが。」


 その言葉に、訳も無く頬が赤くなるのを自覚したは、その手を振り払うようにまた俯いて。
ラインハルトは少しだけ笑って立ち上がると、誰に連絡を入れようとしているのか、ヴィジホンの番号を押し始める。
 恨めしげにその姿を見上げていたは、かすれるような声で問いかけた。


「ねぇ、ラインハルト。」
「何だ?」


 応える声は、こちらに振り返らなかったのだけど。


「どうして、わかったの?」
「どうして、わからないと思ったんだ?」


 不思議そうに首を傾げて見上げれば、少し涙せ歪んだ視界の向こうでは、美貌の幼馴染は首だけこちらに向けて、にやりと笑って更に問い返してきた。






<<  Retune |  back |  Next >>


2008/02/29
可愛い話が書きたい…



(C) 2005-2009  Replica Fantasy 月城憂. Some Rights Reserved.
inserted by FC2 system