「。」 唐突に呼び止められて、は反射的に振り返った。完璧に霊圧を抑えたその相手は、も良く顔見知りである五番隊の隊長だった。 「何?惣右ちゃん。何か用?」 ごくあっさりと、が答える。 口調はあっさりしているが、その表情はまるで藍染が何を言おうとしているのか想像がついているように、うんざりしている。 藍染は思わず苦笑を漏らし、は相変わらずそれを気色悪いとでも言いたげな表情で見返して、歩み寄ってくる藍染を見やった。 「副官入りの話を、断ったんだって?」 「ああ、それか。うん。断ったけど、何か問題でも?」 「何故?折角君を僕の隊に引き抜くチャンスだったのに。」 藍染の、何処か鵜呑みに出来ない微笑に、は軽く溜息をついて答えた。 「あたしは更木隊を離れるつもりは微塵も無い。それに、昇格するってことは、仕事が増えるってことじゃん。仕事に忙殺されるなんて真っ平よ。四席で充分。」 「それが理解できないな。席次が上がることは、強さの証明だ。更木隊であればこそ、は強さを求めると思っていたけど。」 「あたしも理解に苦しむ。強さの証明が、席次だけで決まるとでも思ってる?」 の言葉に、藍染はくつりと咽喉の奥で笑った。も同様に口元を笑みの形に歪めたが、双方共に眼は笑っていなかった。 強さを、ただそれだけを求める。 それは、死神としては至極当然のことであったし、長い年月を生きる彼らにとって、最も身近に楽しめる成長が、それなのだから。 白々しく見つめ合った二人の空気が、瞬間的に密度を増して、そして一瞬のスパーク。 だが、も藍染もそれに気付いたと同時に、無意識のうちに垂れ流していた霊力を霧散させた。 またしても、笑えない笑みを交わして、藍染は挑発するように言った。 「僕たちは似ているね。たった一つしか望めないという点において。」 はそれを否定しようとはしなかった。 酷く冷めた笑みは、同様に挑発を込めて藍染を見やる。 「そうだね。求めるものが同じなのに、正反対の結果しか望めないのは、哀しいね。」 |
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