Replica * Fantasy







No.09  【 麻痺した心は深く突き刺さった刃にも気が付かなかった 】




 地べたに横たわって動かなくなった身体をつついてみる。
うん、完全にやっちゃったなぁ…。
そんなつもりは無かったんだけど。
でも自分の仕事はしなきゃって、必死だったから。
 上手く『スイッチ』が入らなかったのかもしれないし、綺麗に入りすぎちゃったのかもしれないし。
まぁ、原因はいっぱいありそうだけど、とにかく、失敗以上成功未満って所なんだろうか。
 だって、ボス達のお仕事の援護だったんだよ。
お仕事それ自体を失敗にするわけにはいかないんだよ。
だから、私は骸さんと雲雀さんと外回り。
内回りのお仕事は、ボスと武さんと隼人さんの仕事。
まぁ、それでも、私が分担した分は、雲雀さんや骸さんの半分くらいなんだけど。
だから、二人はまだそこら辺で遊んでいるはず。
 ごろりと、もう動かなくなったそれに触ってみる。
血を流してて、白目を剥いてて、何だか少しグロかった。
 私、一体どう殺ったんだろう?
お腹から、色々はみ出てるし。
 もう一人、ごろごろと転がしてみる。
何か、動かないのは同じなんだけど、こっちは気絶してるだけみたい。
ちょっと顔の形は変わっちゃってるけど、でも、まだ生きてるから。
だからこれは私が分担した分じゃない。
 ボンゴレの鉄則なんだって。
原則、殺しちゃいけないんだって。
私は、上手く殺さずに倒すなんて、出来なかった。
 あーあ。
ボス怒るかな? 怒るよね?
どうしよう、考えただけで凹んできた。
 元々、今回のお仕事も、私が駄々こねてついてきたわけだしな。
呆れられたらどうしよう?
放り出されちゃったらどうしよう?
 ねぇ、私まだ、上手く『スイッチ』の切り替えが出来ないだけだよ。
次はもっと上手くやれるよ。
 だから、出来れば怒らないで欲しい…。


っ!!」


 ボスが凄い声で私を呼んで、びくっと身体が震えたのが分かった。
同時に、何かが頭の中でカチって外れるような感じ。
思わず力が抜けてへなへな座り込んでしまった私に、隼人さんと武さんが近付いてくる。


「馬鹿!お前、何ヘマしてやがる、!」
「あー、うん。あんまり上手く出来なかった。殺しちゃった。」
「そんなことより、大丈夫か?立てるか?」


 えへへ、と笑いながら。
言い訳めいた言葉を返せば、武さんがなにやら慎重そうに私の背中に回って、大事なものにでも触るような手つきで身体に触れた。
 いやん、セクハラですか?
なんて、テキトーなことを思いながら肩越しに視線をやれば、右肩の少し下の辺りにナイフが生えてて。
 うそ…、ナイフ刺さってる。 何この最大級の失態…。
 もう地面に沈み込みたくなるくらい、イタダケナイ。
やっぱり私はマフィアにはなれないのかなぁ、とか。
戦闘技術とか叩き込まれても、所詮は実戦と努力で学んだものじゃないから、駄目なのかなぁ、とか。
 ちょっと泣きそうになった。
ちなみに、幸か不幸か痛みは殆ど感じない。
まだちょっと『スイッチ』が入ったままなのかもしれない。


…。」


 ボスが、呆れてるのか怒ってるのかよく分からない、でもちょっと怖い顔で覗きこんでくるから、私は大慌てでナイフを抜き取って、それを放り投げながら弁解した。


「次…次は失敗しないから!もう大丈夫だから!だから怒らないで!!」
「ああ、!!そんな無造作に抜いたら駄目だってば!!傷広がるし!てか、血!血!!何考えてるんだ、馬鹿っ!!」
 






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2008/06/29 



 
 

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