「だから、ビッテンフェルト提督は何か勘違いしているんでしょうね。」 は、先日ビッテンフェルトに言われた言葉を思い出して、そして可愛らしくころころと笑った。 唐突に部屋を襲撃され、持参したお菓子を広げてお茶まで用意しだしたの話を、ロイエンタールは右から左へと聞き流していたが、その話題になったときには手を止めての話をきちんと聞いていた。 馬鹿らしい、と。 隠そうともしない感想が、溜息として表に出てしまったのは、責められるところではないだろう。 「、お前は本当に知らないのか?」 「何をですか?」 「陛下とキルヒアイスの想いも、お前と同じなのかと聞いているんだ。」 ロイエンタールは、せいぜい嫌味に聞こえないように努力した。 彼にしては珍しい努力である。 ロイエンタールには豊富すぎるほどの経験があったが、そのどれもが真剣なものではなかった。 ロイエンタールに言わせれば、ラインハルトとキルヒアイスの感情は明白である。 の感情も、殆ど明白と言っていいのだろう。 ただ、問題なのは、小さくても真剣なその感情が、どこに向いているのか自分で理解できていないというところだった。 少し考えて、は両手にもったティーカップを抱えて、生真面目過ぎる程真面目な声で答えた。 「――同じだって、思いたい。です。」 だって、人の気持ちなんて判りませんから、と。 彼女は少し寂しげに笑う。 だからロイエンタールは、結局堂々巡りなその感情を、酷く愉快そうに嗤った。 「お前が知ろうとしないだけだろう?」 |
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