Replica * Fantasy







No.03  【 自分の為なら、いくらでも平気で真実を殺せるよ 】




「好きなんだろう?陛下のことが。」
「好きじゃないですよ?」


 さも当然のように口にされたビッテンフェルトの言葉に、は不思議そうに首を傾げて答えた。
むろん、この場合、『好き』という言葉が意味している感情は、恋愛感情に当たるものなのだろう。
ビッテンフェルトは殆ど確信を持って問いかけたのだが、は考える素振りを見せることも無く、即答で否定したのだ。


「おかしいな。じゃあ、キルヒアイスの方なのか?そうすると、またファーレンハイトの一人勝ちか。」
「また、賭けてたんですか?」


 じとりと、がビッテンフェルトを睨めば、彼は悪びれる様子も無く豪快に笑って、頭を撫でる。
もそれほど怒っては居なかったが、どうして自分達が賭けの対象になるのか、それすらも疑問に思ってしまった。


「ラインハルトもジークも大好きだけど、家族ですもの。恋人になんて、考えたこと無いです。」
「考えたことも無い?」
「まったくもって微塵も無いです。」


 ビッテンフェルトはじっとを見つめる。
も臆することなくビッテンフェルトを見つめ返した。
やがて先に肩をすくめたのはビッテンフェルトの方であった。
 は、嘘などついていない。
ビッテンフェルトにも、自分にも。
むしろ、自分自身にでさえ、その真実に気付いていないのだ。
無意識に、意識に上らせないようにしている。
自覚する前に、殺してしまっているのだ。
 彼女は、一人を選べない。
ラインハルトと、キルヒアイスのどちらかなんて。
どちらも愛しているから、どちらも愛していないと言う。
それは、関係が変わることで失うことを怖れた、幼い自己防衛本能なのかも知れない。


「――厄介だな。」


 珍しく深刻そうに呟いたビッテンフェルトに、は訝しげに首を傾げた。
「どういうことですか?」と、言外に問い返してみたが、ビッテンフェルトは苦笑を浮かべて「なんでもない」と答え、またくしゃりとの頭を撫でた。






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2008/03/24 
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