Replica * Fantasy







No.02  【 伸ばした腕で視界を奪った、他の何も君を侵せないように 】




 零れた涙が、その頬を伝いきる前に、ラインハルトはの視界をふさいだ。
ああ、間に合わなかった。
彼女は知らなくて良いことを知ってしまった。
それは、今更なことでもあったし、今更だからこそでもある。
は無知を嫌うけれど、ラインハルトはそれを罪悪だとは思わない。
世の中には知らなくても良いことが、たくさんあるのだから。
仮にそのすべてを知っていたとしても、彼女に出来ることはごく限られている。
だけど、に力が及ぶ範囲について、彼女は必要不可欠なのだ。
だから。


。負わなくて良いものに、眼を向ける必要は無い。」


 そう呟いて、ラインハルトは優しくの視界を奪う。
傷つくのなら何も見なくて良い。
自分も、キルヒアイスも、その先に続く未来も、今目の前に映っている現実も。
 でなければ、自分はいつかを何も見えないところに閉じ込めてしまうから。
だけど、は無知を罪悪だという。
それは、旧帝国の貴族がそうであったから。
そのために流れた血が多すぎたから。
そして自分が、その流れを汲む血族であるから。
 それは微々たる物であるけれど、彼女は自分が犯した罪で無くても、それを自分のそれと、いとも簡単に摩り替えてしまう。
 だから、優しく視界を塞いだラインハルトの手に、自分の手を重ねて、彼に問いかける。


「――本当に?本当にそれでいいの?」


 ああ。この小さな少女は。
そしてはまた、一生かかっても答えられない難題を問いかけてくる。






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2008/03/07 



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