「――ん…ザエル……」 「うるさい、気安く僕の名前を呼ぶな。」 「あっ…やぁんっ……」 発せられた言葉に、意味があるのか無いのか、それによってはは今夜もザエルアポロの部屋に足止めされることになっただろう。 無論、はそのために作られた存在であるから、ザエルアポロがを利用したところで、何ら問題は無い。 最初は、ザエルアポロは彼が疎んで惜しまない兄のイールフォルトに当てつけてやろうと、何とも子どもじみた意図からを抱いた。だが、残念ながらがそういった存在としては使えないことも、すぐに理解した。 「ザエル、大好き。」 気に入らない。何もかもが。 自分の名前を短く省略することも、同じようにイールフォルトをイールと呼ぶことも。 クズの兄のモノを奪ったつもりでいて、自分より先に彼がを利用していたことも。 クズの兄とただの性欲処理のための女に振り回されていることも。 だからザエルアポロはその苛立ちを抑えようともせずにの中を支配した。 「黙れ。虫唾が走る。」 は誰にでも同じことを言うし、相手が誰でも構いやしないのだ。 求められれば応じるし、それに疑問を持つことも無い。 それが、自分の存在意義であると、それだけを理解しているから。 だからそれに疑問を持つことは、自分自身の存在意義を否定するということなのだ。 よく出来ている、と。 ザエルアポロは苛立つ感情の合間からでを観察する。 無論、その間も彼女を蹂躙することを忘れずに。 研究者として、ザエルアポロも自分に都合のいいモノを作っているが、奴らに己の存在のあり方について、疑問を持たないよう知能を低くすると、どうしても反応が鈍くなりこうした使い道には向かなくなっていく。 藍染がどのようにしてを作ったのか、大いに興味があった。 「試しに食ってみるか。」 それで、自分の血肉となるなら、それも面白いかも知れない。 舌なめずりをしながら見下ろせば、きつく眉を寄せていたはうっすら目蓋を開いて呟いた。 「――ん…もう…食べられた……」 は恍惚とした表情で、それでもザエルアポロの言葉に明確に受け答える。 ほら、自分達のような数字持ちのアランカルに比べれば知能は確かに低いものの、一つの言葉について複数の意味を示す程度には理解している。 体の感度も良好。 反応も悪くない。 まさに欲を満たすための存在。 こんな低級のアランカルを相手に満たされているのが面白くなくて、ザエルアポロはあえてが泣き叫ぶような攻め方をした。 「拒否」なんて言葉を知らないが、泣き叫んで拒否したくなるような、程。 「やだぁ…ザエル…っ!ザエル…痛いぃ……」 そう、もっともっと泣き叫べばいい。 お前は満たすための存在なのだから。 俺が満たされるために泣き叫べばいいのだ。 「あ…っん……ザエルなん…て……世界一嫌い、だよ……」 「――光栄だな。俺もお前が大嫌いだ。」 組み敷かれたは、鳴く代わりに泣く。 喘ぐ代わりに呟く。 それを聞いたザエルアポロは、皮肉めいた笑みを刻むと共に、またの一番奥を突いた。 |
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