「ねーねー、ザン様―!!」 やたらとテンションの高い声が、寝室に響く。 このヴァリアーの本拠地で、そんな呑気で甲高い声をしているのはただ一人だし、そもそも俺を「ザン様」とかよく分からない呼び方で呼んでくるのも一人しか居ない。 つい最近、俺の戸籍上の妹になった女だ。まぁ、女というにはまだまだいろいろと貧相ではあるが。 「何だ。騒ぐな。買い物ならルッスーリアと行け。構って欲しいならベルに言え。サウンドバックが欲しいならカスを使え。」 「ルッス姐さんとベル君とスッピーは、もう誘ったの。ついでに言うなら、マーモンちゃんとレヴィたんにも、もう声をかけたんだよ。あとは、ザン様だけなのー!!」 ばふん、と、音を立てて、は俺の上に乗っかってくる。おい、俺の眠りを妨げるのか?いい度胸だ。 制裁の一つでも加えてやろうかと、とりあえず上半身だけを起こすと、はきゃーっと楽しそうに声を上げた。 「いやーザン様のえっちー!どーしていつも半裸で寝てるの?!」 「イヤなら出ていて。それよりお前、どうしてそんな濡れ鼠なんだ?」 毛布越しに触れたの服は、何が起きたのかびっしょり濡れていた。 今は真冬じゃねぇのか?そんなに濡れてたら風ひくだろうが。今度は何をしでかしたんだ、は。 俺の疑問に答えたわけではないだろうが、はそのままのテンションでまくし立ててきた。 「あのね、今、雪合戦してるの!凄く楽しいよ!ザン様もやろうよ!!」 雪合戦かよ…。お前、そんなので喜ぶ年齢は過ぎてるんじゃねぇの? それよりも、既に、参加してるメンバーも問題だ。三十路を過ぎた男共が、真面目に雪合戦やってんのか? 「くだらねぇ…」 「クダラナクナーイ!!」 もう一度布団にもぐりこんだ俺に、は叫びながら覆いかぶさってくる。おい、やめろ。濡れるだろうが。っつーか、お前、濡れてるんだから早く着替えろよ。 「ねぇねぇ、ザン様。雪玉に石とか詰めて投げるの。超サバイバルだよ?みんなでスッピー集中狙いだよ?楽しいよ?」 「はっ!カスを攻撃するのに石入りの雪玉なんざ必要ねぇよ。」 「ザン様さりげなく酷いこと言ってるー。」 それで爆笑してるお前も、相当酷いことを自覚しとけ。まぁ、カス相手に罪悪感なんざ必要ねぇけどな。だから、とにかく濡れた服のままで飛びついてくるのは止めろ。 ぐぎぎぎぎ、と。結構邪険に剥がしているつもりなのに、はきゃーっと喜んで叫ぶ。ちょっと待て、遊んでるんじゃねえよ。気付け。俺はまだ眠い。 だが、認め難いことに最近俺への対応も覚えたらしいは、べったりへばりついたまま俺を上目遣いで見つめて強請ってきた。 「お願い、お兄ちゃん」 ……………。しょうがねぇから、お前をびしょびしょにしたヤツラに報復しに行ってやるよ。 |
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