だけど、そのときは何となく聞き流した話も、そのあとリィとルウが元の世界に帰ったとき、それについていったシェラの姿に、彼らの一族が恐慌状態一歩手前までに驚愕したのは事実だったし、更にの姿を見て、ついにばったりと倒れたものが出たのも事実だった。 としては、自分の世界に戻してもらうために一時的に寄り道をしただけの世界であったが、おそらくあの後に自分が居なくなったことで、ほんの少しだけあの世界の神々は落ち着いたことに間違いはないだろう。 さすがに、がもと居た世界について、なんの手がかりも無い以上、その世界との通路を開くということも困難であり、時間も要すると言われたときも、ルウとリィの一族は酷く嫌な顔をしていたのだ。 「ここに留まるつもりなのか」と、冷ややかな視線が語っていた。 流石に恐慌状態を持ちこたえたのは、一族の長という矜持があったのかもしれないが、酷く攻撃的な気迫で持ってを見下していたガイアを、ルウとリィは無言で睨みつけていた。 「そんなに苛めないでよ。何が問題なのさ?はこの世界に迷子になったただの人間だよ?人間なんて、君たちにとっては取るに足らない存在なんでしょ?コレだけ人間が溢れている世界に、シェラとの二人が加わったからって何が問題なの?」 リィは殺気に当てられて固まっているシェラの肩に手を置き、ルウはを大げさに抱きしめて嘆いた。 その姿を苦々しく眺めながらも、ガイアはその殺気を緩めない。 いい加減にして欲しいと、ルウが溜息をついたとき、がおもむろに口を開いた。 「あの、ガイア、さん?」 その声に驚いたのは、ガイアよりもリィやルウのほうで、シェラに至ってはこの殺気を浴びながら口を開いたに眼を剥いていた。 「私、この世界に居てはいけないんですか?」 にしてみれば目の前の女性が何故こんなにも自分を恐れているのか、ちっとも分からなかった。 ガイアは殺気を放ってはいるが、おそらくそれは自身を恐れているからか、そうでなければを得たルウに対しての畏れなのだろう。 自分が、当たり前のただの人間としか認識していないは、だからこそ恐れによって放たれるガイアの殺気を、殺気として受け取る前に疑問に思ったのだ。 「心配しなくても、私、この世界に永住しようなんて考えていません。ただちょっと、ルウが私の世界を見つけてくれるまで留まらせて欲しいだけです。もし、早く居なくなって欲しいというなら、それこそガイアさんたちにも私の世界を見つける協力をしてもらうしかないんですけど…。何しろ私自身は何もできないんです。」 困ったように笑うに、思わず噴出したのはリィだった。 シェラは脱力したように肩を落とし、ルウはあからさまに「帰っちゃうの?」と残念がっている。 暫くそれを冷ややかな視線で見つめていたガイアは、ようやく一つ溜息を出すと、静かに注げた。 「仕方ありません。貴方の世界を見つけるまでです。ルーファセルミィ、グリンディエタ。貴方たちの責任において光の娘を管理するのです。」 『管理』という言葉に対して、ルウもリィも眉をしかめたが、それが言葉としてガイアに投げられる前に、がルウの腕の中で微笑んだ。 「ありがとうございます。」 ガイアが毒気を抜かれたのは無理も無いだろう。しかし、ラーの族長であるガイアも、それ以上は何も言わなかった。 幕を引くようにその姿がさらりと消えて、後に残された4人のうち、シェラはようやく緊張をといて息を吐き出すと、綺麗な顔を複雑そうに微笑ませて、を見つめた。 「貴女は、よくあの殺気の中で会話が出来ますね。」 「えっと、褒めてくれてるのかな?」 シェラが呆れた表情を隠しもせずに言えば、はちょこんと首をかしげる。百戦錬磨のリィやルウ、シェラにとっては、身動き一つ叶わぬほどのガイアの気も、そういったことには縁の無いには「怒ってるのかなぁ」くらいにしか認識が出来ていないようだった。怖いもの知らずといえば、それまでだが、無理も無いといえば無理も無い。 「さて、それじゃあ、とりあえず滞在許可は取れたから、次は身柄引受人ってトコかな?」 ルウはうきうきとした表情での手を握り、くるりんと振り返って金銀天使に笑いかけた。 「最初はシェラの方からお願いしようか。」 その一言で、生物学上の父親との再会を余儀なくされたリィは、心底嫌そうな表情で頷いて答えた。 |
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